2018年4月28日土曜日

入試の思い出

時々、自分があの東京大学の学生であることを思い出して、信じられないなあという感想を抱く。東京大学を受験して合格したのだから確かに東京大学の学生なのだが、入試の日を思い出しても、よく受かったよなあと思ってしまう。

私は出願締め切りのギリギリまでどの大学を受けるか迷っていたので、ホテルの予約に難儀した。東京の地理感覚が全くわからず、本郷キャンパスから同心円上にビジネスホテルの空きを調べていって、見つかった中で本郷キャンパスに一番近いホテルを予約した。それが九段下のホテルだった。私はそれまで東京に行ったことが一度だけあった。今思えば東京のことはよくわかっていなかったのだが、当時の私は異常に自信を持っていて、まあなんとかなるだろうと思っていた。更に、その異常な自信のため、私は東京大学の他にどこも出願せず、受験の前日まで東京に行くことはなかった。
受験の前日、東京駅に行き、東京に住んでいたいとこと合流した。私は、受験の前日になって初めて九段下から本郷まで歩いて行くのが大変であることに気付かされた。そこで、地下鉄を使うことにして、いとこと地下鉄に乗る練習をした上で本郷キャンパスの下見をした。オープンキャンパスなども面倒で行かなかったため、私はこの時初めて東京大学を訪れたのだった。しかし、道中はいとこについて行くのがやっとで、何線に乗り換えなどがよくわからず、更にはSUICAを紛失し、私は東京の駅での乗り換えに不安を覚えた。いとこの助言を踏まえて、神保町から春日まで三田線一本で行くことにした。

翌日、私は予定通り起床し、出発した。春日駅に無事到着し、地上で周りを見回した。受験生らしき人は誰もいない。スマホの地図アプリを開き、本郷に行こうとするが、方向がわからない。交差点に政治家が立っていたので、方向を聞いてみたら教えてくれた。その通りに進んでいき、スマホの地図アプリで現在地を確かめてみると、進む方向が全然違っていたことが分かった。選挙権を得てもその政党には投票してやるものかと心に決めつつ、道を戻って、正しい方向へと進んだ。歩いて分かったのだが、春日駅から本郷への道は上り坂になっている。本郷までも微妙に遠く、ひ弱な私は疲れながら歩いていった。そういうわけで、途中で弁当を買って正門に着く頃にはギリギリな時間になっていた。受験生の姿はまばらで、焦りを覚えてもよかったのだが、私は特に焦りを覚えなかった。時錯の人から予想問題集をもらい、加えて握手もしてもらってウキウキで理学部一号館へと歩いて行った。握手を求められた時錯の方が「え、平社員ですけど.......」と困惑していたのをよく覚えている。
握手をしてもらえたのが嬉しくて、部屋に入って時錯の予想問題集だけ読んでいたらあっという間に国語の試験の開始時間になってしまった。試験自体は無我夢中だったのでよく覚えていない。

入試のことは今思い出してもヒヤヒヤさせられる。入学してから知ったことだが、本郷三丁目駅や東大前駅からなら人の流れがあってわかりやすかったらしい。何も知らず春日駅から行こうと思ってしまった自分の判断に愕然とした。それ以外も今の自分ならできない判断の連続である。よくこんなのでなんとかなると思っていたな、よくなんとかなったものだなと思いつつ、無知と無謀の恐ろしさを深く反芻せざるを得ない。

0 件のコメント: